私の夫のセイは、私と同学年で
現在66歳です。
3年半ほど前に脳梗塞を起こし、
その後遺症で失語症になりました。
高次脳機能障害のひとつである
「失語症」という障害です。
「高次脳機能障害」や「失語症」
という言葉は、
セイが倒れて初めて知りました。
高次脳機能障害は、脳のどの部分に
梗塞が起こるかによって、さまざまな
症状や呼び名があるようです。
セイの場合は、左脳の一部が損傷し、
失語症と診断されました。
脳梗塞というと、身体に麻痺が残る
イメージがありましたが、
セイの場合、運動機能にはまったく問題がなく、
見た目は健常者と変わりません。
例えば、道で人にぶつかりそうになれば
「ごめんなさい」と言えますし、
大好きなラーメン屋さんを出るときには
「美味しかったです!」とも言えます。
そのため、ぱっと見ただけでは
障害があるとは分かりません。
セイ以外の失語症の方をよく知らないのですが、
おそらく失語症にもいろいろなタイプが
あるのだと思います。
セイの場合、日常会話は難しいのですが、
よく使う簡単な言葉は自然に出てきます。
例えば「疲れた〜」とか、何か失敗したときの
「やっちまったよ!」などは普通に言えます。
ただ、不思議なことに——
「いただきます」は言えるのに
「ごちそうさま」は言えない。
「行ってきます」は言えても
「ただいま」は言えない。
何が基準なのか、今でもよく分かりません。
また、言い間違いもよくあります。
「高い」は「デカイ」
「辛い」は「熱い」
「痩せた」は「安くなった」
最初は戸惑いましたが、今ではなんとなく
分かるようになりました。
長い会話を理解するのは難しい
ようですが、不思議と“雰囲気”は
伝わるみたいです。
私が他の人と話しているとき、
「これは分からないだろう」と思ってセイの
話をすると、突然反論されたりします😅
100%理解できなくても、
単語や空気感から内容を感じ取って
いるようです。
もともとアニメが大好きな人なのですが、
失語症になった今でも、
パソコンやテレビで楽しんでいます。
言葉が完全に分からなくても、
映像や流れで理解できるのかもしれません。
こちらの言っていることを100%理解して
もらうことは難しく、またセイ自身も、
自分の気持ちをうまく言葉にできません。
「言いたいことはあるのに言えないんだよな〜」
と、もどかしそうにすることもよくあります。
数字については問題なく、
金額や時間もきちんと理解できます。
ただ、読み書きは難しく、
文章を読むことはできません。
その代わり、図形や写真などは理解
できるため、単語を見て「形」として
意味を認識しているようです。
そのため、コミュニケーションは
簡単な単語や数字を書いて伝えることが
多いです。
これが、セイの現在の状態です。
身体に麻痺がなかったのは本当にありがたい
ことで、今も一緒に旅行を楽しんでいます。
そして実は——
以前よりずっと夫婦円満かもしれません。
お互いに腹が立つことがあっても、
セイはうまく言葉にできないし、
私は言っても伝わらないと思うと、
言う気がなくなる・・・。
結果として、
まったく喧嘩になりません😅
失語症で苦しんでいる方も多いと思うので、
こんなことを書くのは申し訳ない気もしますが、
「病気=悪いことばかりではない」
というのが、正直な実感です。
セイは今年3月で66歳になりました。
誕生日のときに「あと4年かな〜」と言うので、
どういう意味か聞いてみると、
「70歳まで生きられればいい」
と思っているようでした。
もともと20年ほど前から糖尿病があり、
以前は食事や運動にも気をつけていました。
ですが、脳梗塞で倒れてから
病院やリハビリ施設などで1年半ほど家を離れた
ことで、人生観が変わったのかもしれません。
今は「死んでもいいから好きなものを食べる」
と言って、毎日甘いものを食べています😅
私としては、本人の意思を尊重して、
好きなようにさせています。
だからこそ、セイが元気に動けるうちは、
一緒に旅行に行ったり、
できるだけ楽しい時間を過ごしていきたいと
思っています😊